出展者特集記事

【カミ商事株式会社】
CNF100%の成形材料-独自のアモルファス化技術で、より硬い、より強い、高弾性変形性と酸素バリア性を持つCNF成形体を開発!-

2023年12月25日

カミ商事

図1 : エルモア家庭紙

大正初期に紙事業のルーツを持つカミ商事株式会社(以下カミ商事)は1962年に株式会社となり、現在は「環境との共生」という行動基準の下、製紙企業グループ17社とともに「エルモア」ブランドを展開している(図1)。その中核企業であるカミ商事は研究開発と商社機能を担い、nano tech 2024では、同社が中小企業庁の成長型中小企業等研究開発支援事業を受けて開発に臨んでいるセルロースナノファイバー(CNF)を用いた新規セルロース成形体を出展する。同社のCNFは自社で機械解繊したもので、株式会社山本鉄工所のプレス濾過とプレス加工の技術協力を得て脱水から成形工程の時間短縮を実現し、さらに特徴的物性を持つ成形体の開発に至った。本稿ではその概要を紹介するのでnano tech 2024での情報収集の参考にして頂きたい。

1. CNF商品開発に関する課題

パルプ繊維をナノレベルまで解繊したCNFは、軽量・高強度・高弾性・低熱膨張などの優れた特性と、環境負荷の少なさから多くの用途展開が期待されている。しかし、CNFは高価(200,000円/dryKg程度)であり、その上CNFを成形体にするには、脱水から成形・乾燥まで数日間という長い工程時間を要すという課題があった。カミ商事はこれらを解決するべく研究に取り組み、従来にない独自技術の開発に至った。その詳細は未だ公にされてないが、ポイントはCNFスラリーの脱水工程時間の短縮と、成形体を構成するセルロース結晶のアモルファス化の二つにある。開発担当者によると、開発過程では幾つものセレンディピティとでも言うべき幸運に恵まれたという。

2. カミ商事によるCNF技術開発

・CNFスラリーの脱水と成形

機械解繊されたCNFは固形分濃度が1%程度以下の水スラリーであるが、流動性が低く脱水し難い材料である。一般的な濾過法等に依るCNFスラリーの脱水から成形までは、数時間から数日かかると言われるが、カミ商事はたまたま目にした山本鉄工所のプレス濾過器を用いて条件を探索したところ、驚くべきことに数分という短時間で所望の脱水率に達し、同時にシート状に成形することが出来た。もともと、この濾過器は活性汚泥の脱水用途に作られたもので、CNFに使われたことは無かったという。これが第一のセレンディピティであった。

・新規なCNF成形体開発

図2 : 新規CNF成形体

このようにして得られたウェットのCNFシートを乾燥するにあたり、これも山本鉄工所製加熱プレス機の使用を試みた。得られた乾燥シートは、紙と同じセルロースから出来ているとは思えない程硬く、高い弾性率、強い弾性変形性(バネ性)と良好な耐衝撃性を持ち半透明感を有している。プラスティック製シートとも見える厚み150から600 µmの新規なセルロースシートが得られたのである(図2)。シートを何枚も貼り合わせることで、さらに厚い成形体を作ることも出来る。
このシートの表面は通常の紙に比べ滑らかで、水やインクなどが直ぐに浸み込むことがなく、溶剤にも侵され難い。酸素バリア性を調べたところ、酸素透過率はアルミ蒸着PETフィルム以下であった。顕微鏡で観察すると、繊維であるCNF同士が従来よりも密接していることが分かった。通常の紙であればセルロース繊維が絡まっただけの状態なので、繊維間に多くの空隙が存在する。開発されたシート状成形体では、CNFがアモルファス化して密な構造が出来たと推測されている。これにより高い機械的特性や酸素バリア性が実現されているのであろう。セルロース結晶のアモルファス化に関する研究は非常に少なく、僅かに320℃、25 MPaの条件下で結晶のアモルファス化が進行するということが知られているのみであった。開発された乾燥条件で、これまで知られていなかったセルロース結晶のアモルファス化が生じ、高い機械的特性が得られたことは、第二のセレンディピティであった。

3. 大幅なコストダウンの可能性と将来への展望

開発されたCNFの成形条件でマイクロフィブリル化セルロース(MFC)を成形したところ、CNFの場合と同様な現象が起こり、CNFを用いた場合と同様な成形体が得られた。MFCの解繊度は低いがCNFに比べ1/100程度の低価格であり、これを使えば大幅な原料コストダウンが期待される。
現在の試作サンプルは30cm×30cmのサイズであるが大判化や数cmの厚みにする積層化の計画も進行中である。今後は物性データの充実を図るとともに、セルロース結晶のアモルファス化について海外の大学と共同研究も行う予定という。
開発された新規なセルロース成形体は、アクリル樹脂を超える硬度、ポリプロピレンを超える耐衝撃性や高い弾性変形性、高い酸素バリア性などを持ち、アウトガスも発生せずプレス成形加工も可能という特長を持つ。加えて再生可能で大量に存在するセルロースを原料とし、環境に及ぼす影響が少ない。自動車業界、宇宙衛星ほか、様々な分野での使用が期待される興味ある材料である。nano tech 2024にて現物に接し、活用のアイディアを膨らませて頂きたい。サンプル提供も可能とのことである。

 (註)写真はすべてカミ商事株式会社から提供されたものである

小間番号 : 5V-08

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