出展者特集記事
2024年1月23日
日仏めっき5社(ヱビナ電化工業(株)、スズキハイテック(株)、塚田理研工業(株)、吉野電化工業(株)、Jet Metal TECHNOLOGIES(仏))の事業経歴を足して“表面処理350年”、その積み重ねた経験を活かして新技術の創出に挑戦している成果をnano tech 2024に出展する。 めっきの薄膜を素材表面に施すことで素材に足りなかった性能を補い、また新しい機能を付け加えることができる。上記5社は、そうしためっきが発揮する付加価値を新たに掘り起こす研究開発に重きを置いている。5社間には、普段から人・技術に交流があり、中小企業では珍しい同業種間の横繋がりを構築、どの会社が窓口になっても、お客様の製品処理に適した会社にたどりつくことが出来るという。 nano tech 2024では、以下に示す放熱材料の放熱効果をより高めるマイクロテクスチャ、高アスペクト比3次元ナノ・マイクロ構造体製造技術によるバイオミメティクスシート、ナノテクノロジー活用の電磁波シールドめっき、pCFRP(炭素繊維強化プラスチック用めっき)、スプレー銀めっきの他、多種多様な新規開発めっき技術を紹介する。
ヱビナ電化工業(株)は放熱/排熱マイクロテクスチャ「スゴヒヱ®」を展示する。デザイン工学による規則性・準規則性を組み合わせた表面構造(マイクロテクスチャ、図1)を基材に形成させることで、熱伝達率や近赤外領域(860nm以上)での放熱・排熱効果を向上させる。令和5年Go-Tech事業にも採択され、顧客要求に適した形状の試作・開発を進めている。
図1: 表面デザイン例 (凸80 µm、溝10 µm)
スズキハイテック(株)では、フナムシの脚を模倣した表面微細構造による撥水・親水の指向性ある流路を設計し、同社の新技術(MEMS/電鋳/成形)によって、アスペクト比10以上の大面積バイオミメティクスシートを開発している。液体の瞬時拡散、混合液の分離が可能であり、“ヘッドライトの水滴付着・着氷防止”、“濡れないLiDARセンサー“などへの応用 を考えている(図2)。
図2 :バイオミメティクシートのヘッドライトへの適用(左)とLiDARへの適用(右)
塚田理研工業(株)では、広い周波数範囲で優れた遮蔽性能を発揮する電磁波シールドめっきを展示する。ナノテクノロジーを活用し、柔軟性が向上し、複雑な形状にも対応可能、厚みを抑えつつ高い性能を実現、環境への影響も低減するという。動作メカニズムを図3に示す。入射波のうち反射しなくて内側に侵入した電磁波の一部は内部で反射を繰り返し減衰していく、即ち、反射効果、吸収効果、内部反射効果が重なって、シールド効果を高めている。
図3 : 電磁波シールドめっきの動作メカニズム
吉野電化工業(株)では、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)プリプレグ材及びCF(炭素繊維)へのめっき品を展示する。CFRPは軽量且つ優れた機械特性をもち、飛行機ボディーをはじめとして性能重視の製品に使用されている。CFRPに不足している性能は電気伝導性である。これに対処する手段として吉野電化工業は、産総研との産学共同プロジェクトでCFRPプリプレグ材への無電解めっき処理を可能にした(pCFRP)。この技術は、従来技術より優れた耐雷性と耐ガルパニック腐食を実現すると共に、CFRPに電磁波シールド、配線形成を可能とした。
図4 : pCFRPによるシールド性・耐雷性付与
フランスのJet Metal TECHNOLOGIESはスプレー銀めっきで5社共同展示に参加する。装飾コーティングから、最近では機能性コーティングに力を入れている。スプレーめっきの装置と前後工程の製造設備及び薬剤を商売している。スプレーめっきの特徴は、微細領域塗布と厚さの制御ができることにある。具体例として周波数干渉面(FIS)の選択的メタライゼーションコーティングなどがある(図5)。
最後に、以上紹介した出展品は筆者が紙面の都合から選んだものであり、各社とも紹介できなかった多くの創造性のある興味深い作品を出展している。ご来場のお客様には是非これら新しいめっき技術に触れ、めっき技術活用によるご自身の商品の価値を高められることを期待したい。
図5 : 選択的メタライゼーション工程
(注)図はヱビナ電化工業から提供された。
小間番号 : 4N-17