(株)カーボンフライは、「優れた性能をもつカーボンナノチューブ（CNT）の社会実装を妨げている量産の壁を独自技術で突破し、その応用分野を広げたい」という社長の鄧飛（テン フィ）氏の意図のもと、2022年1月に設立された高性能CNTの開発・量産を手掛けるスタートアップ企業である。
今回展示するCNTは４～6層の多層CNTである。これはテン社長の「厳しい条件が求められる宇宙素材にも活用することができる、フィルムやファイバーに加工可能な超高品質の高性能CNTを産業レベルで量産する」ために最適な条件として選択されたものだ。 nano tech展にて、開発した高性能CNTの品質、量産技術をご覧いただくとともに、各種の用途開発に積極的に協力したいと考えている。
コア技術の一つはCNTの製造技術である。製造装置の概略図を図1に示す。触媒をナノレベルで制御することができる独自技術によって処理した基板を、700-800℃の高温炉内に配置し、原料ガスのアセチレンを流し込むことで、１本１本の径、長さが均一なCNTを基板上に成長させる。
カーボンフライ製CNTの特性を表1に示す。直径は6-10nm、長さは100-1000μｍの範囲で均一に制御することが量産ベースで可能である。生成したCNTは独自技術によって触媒を殆ど内包せず回収できるため不純物が少なく、その純度は99.8％と極めて高純度である。

カーボンフライ製CNTの成長およびファイバー化、フィルム化の模式図、成長した基板上のCNT断面のSEM像を図２に示す。断面SEM像より確認できる均一かつ真っ直ぐなCNTの集合体である高密度CNTアレイは、林立する一本一本のCNT間に働くファンデルワールス力によりバンドル化しやすい性質がある。このようなCNTアレイの端部を引き出すと、CNT同士が次々と引き付け合ってバンドル化しながら、蚕糸のように繊維状のものが形成される。この繊維状のものをそのまま引き出して積層化するとCNT100％のフィルムに、点状に細くなるようにしながら引き出すとCNT100％のファイバーに加工することが出来る。 もう一つのコア技術は、CNT粉末の分散化技術である。一般的にCNT粉末は分散が難しいとされるが、カーボンフライでは分散技術の開発によりCNT1本1本をほぐしてポリマー全体に分散させることができる。

図1 :カーボンフライCNT製造装置概略図

表1 :カーボンフライ製CNT特性

展示会では、こうした独自開発の触媒技術と成長温度、ガス流量等のCNT生成技術をベースに、生産量５ton/年を実現する量産機『Caltema®』（図3）を紹介する予定である。
この量産機は顧客の製造現場に設置し、顧客自身でのCNT生産を意図して開発されているため、５ton/年の生産能力でありながらオフィスビルでも稼働できるコンパクトさと省エネルギーを実現している。さらに、独自のAIとIoTシステムによりオペレーションを簡素化し、AIが顧客の要望に沿って製造条件を最適化し、CNTを製造できるようになっている。CNT100%のフィルムやファイバーは、この装置にアタッチメントをつけることにより作製することが出来る。また、更に大型の20ton/年の量産機も2024年の完成を目指し開発中である。

図2 :カーボンフライ製CNTの成長およびファイバー化、フィルム化の模式図、成長した基板上のCNT断面のSEM像

図3 :カーボンフライCNT量産機『Caltema®』外観

カーボンフライはこれまで困難であったCNTの大量生産と低コストを実現した量産機『Caltema®』の開発が、次世代CNTとして社会実装に向けた第一歩になると考えている。将来的にはCO₂を原料としたCNTの製造およびその実用化に向けた技術開発を行い、CO₂を回収・再利用したサーキュラーエコノミーの実現も目指している。
今回のnano tech展において、多くの方々にまずは量産機の特徴を理解いただきたい。また、現在開発に注力中のCNTアプリケーションから、①CNT機能性樹脂（図4）・CNT機能性ゴムのサンプルやその性能評価データ、②CNT-CFRP複合材を用いたバイクパーツや衛星用コンポーネント（図5）をご紹介しながら、貴重な御意見を伺ったうえで、サンプルの提供、共同開発等、お客様との新しい協力関係を構築できればと考えている。

（注）図はカーボンフライから提供された。

小間番号 : 4D-20

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